学びと実践の場「江戸川総合人生大学」が20周年を迎えました
今年で20周年を迎える江戸川総合人生大学は、平成16年に江戸川区が「共育・協働の社会づくり」のために設置した「学びと実践の場」だ。江戸川区在住・在勤・在学の、年齢も経験も異なる人たちが共に学んでいるのが特徴である。
大学は2年制で、「江戸川まちづくり学科」「国際コミュニティ学科」「子育てささえあい学科」「介護・健康学科」と4学科あり、164名(2024年2月1日現在)の学生が学び、卒業生1,176名を輩出した。同窓会には420名が加入し、多くの同窓生が地域社会で活躍している。
江戸川総合人生大学の特徴の一つは「実学」。学びのための学びではなく、実学を学ぶことで卒業後社会に貢献しうる、社会に役立つ人材の育成を行うことです。二つ目は、身分・年齢・学歴を問わないことです。この人生大学の学生の多様性が、大変大きな力になっています。
学生生活の中でぜひ皆さんの生きがいを探していただきたいと思っています。
江戸川総合人生大学
学長 北野 大(きたの まさる)
カリキュラムの一部をご紹介!
学ぶ!
1年生共通基礎科目「えどがわ入門」
江戸川区の教育・子育て・環境・福祉・産業・災害・まちづくり・SDGs等の取り組みを学ぶ。
講師は、北野大学長・斉藤猛区長・教育長・各部の部長等が担当し、江戸川総合人生大学ならではの貴重な授業が組み込まれている。学生は江戸川区の現状と課題・対策等を総合的に学び、江戸川区への理解を深めることで郷土愛が育まれる。
宿泊研修にて斉藤区長の講義
(江戸川区立穂高荘にて)
大学祭の様子
つながりを深める大学祭
毎年7月にタワーホール船堀で開催する大学祭は学生全員が参加する代表的なイベント。クラスでの共同作業を通じて、一緒に達成感を味わい学生同士のつながりを深める機会となっている。
実践!
2年生「社会活動体験」
1年目に学んだことを2年生で実践する「社会活動体験」は30時間組み込まれている。
人生大学同窓会ボランティア連絡会・世話人会からも、登録されている45団体を紹介するなど、体験をバックアップしている。初めてボランティア活動をする学生も多くいるが、有意義な学習ができたことで「生きがい」を見つけることもあり、新しくボランティア団体を立ち上げたり、参加した団体に卒業後も所属して活動を続ける学生も多い。
学科長による講義
現役生インタビュー!
風間 勝昭さん
(江戸川まちづくり学科18期生)
郷土愛を次世代につないでいきたい
定年退職したときに長年住んできた自分の街に何か恩返しがしたいという想いが強くなり、旧中川の清掃活動に参加しました。さらに活動を進めたいと思い、大学祭に行ったことをきっかけに人生大学の入学を決意。江戸川まちづくり学科を選択しました。
私は平井に50年住んでいますが、江戸川区について知らなかったことが多く、大学の授業で様々なことを知ることができました。特に印象に残っている授業は、「協働まち普請」という授業で、荒川ロックゲートについてグループで調査し、活性化の提案をした時のこと。国交省荒川下流河川事務所にお声かけいただき、荒川放水路100周年に向けた勉強会で発表の機会をいただき、周辺自治体の方に提案を聞いてもらうことができました。また、宿泊研修では区長や学長と触れ合うことができたことは貴重な体験でした。
在学中にクラスの仲間に呼びかけ、ボランティア団体も立ち上げました。今では定期的に旧中川の清掃活動やバタフライガーデン・ビオトープの管理等を行っています。大学に入学して地域への恩返しができること、そしてこの年になって新しい友だちが増えたことが一番の喜びです。
櫻井 恵子さん
(介護・健康学科18期生)
人生大学は自分にとって新しい目覚め
長年勤めた医療の仕事を定年退職して時間ができ、しばらくは楽しかったのですが、次第に人のつながりや居場所を見つけたいと思うようになりました。そんなとき娘からの後押しもあって人生大学に入る決意をしました。これまでの仕事から選んだのは介護・健康学科です。生まれも育ちも江戸川区で、60年以上住んでいますが江戸川区のことはまったく知らない状況でした。「えどがわ入門」を受講し、子育て・介護・福祉・災害などあらゆることを学び、江戸川区が安心・安全に暮らせる町であることを実感しました。また、「社会活動体験」では合唱ボランティアに入り、介護施設等で慰問活動を行っています。訪問先で喜んでもらえることが何より嬉しいです。
大学では皆、経験が違い、知識も豊富な人が多く、世界が広がりました。今までは職場のために尽くしていましたが、これからは地域のために尽くしていきたいと思っています。大学への初めの一歩を踏み出したことは、自分にとって進歩です。これからもまだまだ江戸川区の宝物をみつけていきたいです。
江戸川総合人生大学同窓会
同窓会会長 松浦松子さん
会員がいきいきと輝く同窓会でありたいと話すのは、現在同窓会会長を務める松浦松子さん。定年後に勉強したいと考えていた松浦さんは、「学長は北野大教授ですよ」との友人からのアドバイスを受け、江戸川総合人生大学に入学。新しいことにも常に興味を持って挑戦し、仲間と繋がりながら、人のお役に立ちたいと活動している。
「いつでも青春!その時が一番!」と快活に話す松浦さん。
松浦さんは第10期生として国際コミュニティ学科、続いて第12期生として介護・健康学科を卒業。勉強熱心で明るく行動的な松浦さんは、まもなく推薦されて同窓会会長に就任し、3年目になる。
同窓会員は現在420名。在校生、大学事務局と連携を取りながら、活発に活動を展開している。松浦さんは同窓会運営では、会員一人ひとりができることをできる時に楽しくできるように、また、皆が意見を出し合い、話し合ったことをカタチにしていくことを大切にしていきたいと語る。松浦さんのリーダーシップが同窓会の発展に繋がっている。
パワフル同窓生たちの地域貢献力
江戸川総合人生大学で学んだ知識や経験を活かし、学生や卒業生がそれぞれの地域課題のためにボランティア団体を立ち上げ地域社会で活躍しています。
一般社団法人 国際交流エドガワ
理事長 橋田 妙子
第4期国際コミュニティ学科卒業の橋田妙子さんが、被災地支援や国際交流を通して、日本文化を広めたいという思いから発足した。主にお茶会を通じての地域交流や、日本語学校学生へ琴の体験や、着付け体験等の日本のカルチャーを紹介し、国際交流を行っている。
また、東日本大震災時、被災地へ訪問した際に現地の状況を目の当たりにし、被災地への支援をはじめた。支援先は国内に留まらず、海外からの留学生やウクライナなどから避難されている人たちへの支援も行っている。
2024年8月には、ヴァンドーラ奏者であるウクライナ出身のカテリーナ氏の公演会を開催する予定となっているので国際交流の一端として、ぜひ多くの人に来てほしいと語る。
江戸川みまもり隊
代表 伊久美 明
会員50名で江戸川1丁目、2丁目、東篠崎都営団地の主に1人暮らしの高齢者を中心に訪問活動を行っており、その数は670世帯にも及ぶ。訪問時の安否確認だけでなく、コミュニケーションをとることで相談窓口としての役割も担う。東日本大震災の際にボランティアへ行ったことがきっかけで地域の役に立ちたいと考え、第6期介護・健康学科卒業の伊久美明さんが発足した。「この地域には1人暮らしで寂しがっている高齢者が多いので心の拠り所としての存在でありたい」と話す。
えどがわメティ普及会
代表者 竹原 京美
第1期江戸川まちづくり学科竹原京美さんが中心となり、メティ普及に共感する仲間が集まり発足した。インド人講師のインディラ・バット氏との出会いが、インド野菜メティを知るきっかけとなった。JA東京スマイルの紹介で区内の栽培農家が見つかり、地産地消の目標に近づいた。メティの本場であるインドコミュニティとともに、多くの活動グループの協力も得て徐々に日本人にも知られるようになり、在住外国人の多い江戸川区の特色を生かした多文化共生に活動の輪を広げることに繋がった。その活動が認められ、令和5年度ふるさとづくり大賞総務大臣表彰を受賞するに至った。
フードバンク ジョイライフ
代表 髙橋 信行
2019年 第12期子育てささえあい学科の同級生有志が発足した。
「フードロスの削減」、「満足に食事が取れない家庭への支援」を目的とし、一之江、葛西、清新町で食料配布をおこなっている。在学時に満足に食事を取れないひとり親家庭の子供の多さを知り、少しでもその状況を改善したいと考えたのが発足のきっかけである。
フードロスが進む中、ゼロから食料提供企業を開拓し、現在約300以上の受益世帯が登録している。規模が大きくなった事で、今では年間15トンものフードロス削減へと繋がっている。
今後も、活動を続ける事により、貧困の連鎖という問題に取り組んでいきたいと語る。
NPO法人パソコンサポートの会
理事長 佐々木 統一
2005年国際コミュニティ学科第1期生の品田正子さんが2年生在学中に、授業のレポートや発表資料を作ることにパソコンを在学生に役立ててもらいたいという思いから発足した。在校生の全学科で実施していたが需要が高まり、同窓生、一般の方へと広がっていった。現在、5代目の代表を務めるのは第14期江戸川まちづくり学科卒業生の佐々木統一さん。会員同士で勉強会を繰り返し、2022年にはNPO法人格を取得し、デジタル庁のデジタル推進委員の資格も取った。講習会はiPadはじめの一歩からワード、エクセル、パワーポイント、Zoomの使い方、スマホ教室など実用的な内容で毎回大好評。
今回、名刺作りに参加した86歳の女性は、納得するまで分かりやすく教えてくれるので毎回楽しく参加していると話す。
M.M.グループ
代表 松浦 松子
2014年に松浦松子さんが立ち上げたM.M.グループは、「もっと元気に!もっと楽しく!」と想いを込めて名付けられた。団体名のM.M.はこの想いの頭文字である。高齢者施設や障害者施設などを訪問し、『お客さまも参加して一体となって楽しもう』のコンセプトのもと、南京玉すだれ、もっともっと音頭、歌や踊り、マジックなどのパフォーマンスを披露しながら、笑顔と元気を届けている。実際に公演会へお邪魔したところ、メンバーもお客さまも全員が心から楽しんでいる姿が伺えた。お客さまの喜ぶ顔、そして「楽しかった!また来てね!」などの言葉が、一番の喜びと活動の励みです
とメンバーは語る。
江戸川にほんごクラブ
代表 長谷川 忠
1994年に教員OBの方達の発案で設立された外国人のための日本語学習サークル。現在の会員数は21名、内14名が人生大学卒業生で現役生も含まれる。代表を務めているのは国際コミュニティ学科第6期卒業生の長谷川さん。区内の日本語学習教室の中では草分け的なグループで30年続いている。教室での教え方は原則マンツーマン形式、テキストを使って勉強したい人や、会話を覚えたい人など、学習者の希望に沿って指導している。日本の文化や慣習などもテーマの一つで、和気あいあいとした雰囲気で学習している姿が印象的。学習者の「勉強して良かった」の言葉が喜びと活動の原動力になっている。
江戸川総合人生大学
これまでの人生経験や知識を活かして社会貢献を志す皆さんを応援するために、平成16年に江戸川区が設立した学びと実践の場です。
しのざき文化プラザ3階
03-3676-9075