NPO法人ふるさと東京を考える実行委員会 理事長 関口 雄三さん

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ふるさと葛西の海で海水浴の復活を実現

「里海」という言葉をご存じだろうか。
ふるさとの海、葛西で失われた自然を取り戻そうと活動する、NPO法人ふるさと東京を考える実行委員会で理事長を務める関口雄三さん(関口雄三建築設計事務所社長)は、信念を貫いた活動を結実させ、2012年から「里海」葛西海浜公園での海水浴を50年ぶりに復活させた。

今年も7月の海開きの日から43日間、葛西海浜公園西なぎさは海水浴を楽しむ多くの家族連れで賑わった。毎週日曜日には「里海まつり」が実施され、子どもたち向けに投網体験や生物解説、海での泳ぎ方教室、ベカ船乗船体験、そして、めほり体験(昔ながらの大きな貝のとり方体験)など普段はできない貴重な体験ができる。
海水浴が復活されてから現在まで、葛西の海を訪れた人々は45万人にも上るという。

関口さんは半農半漁の葛西で生まれ育ち、4人兄弟の次男。
家の前はあぜ道で近くには小川があり、少し歩くと遠浅の海があった。どじょうやメダカを追いかけ、つりに行けば、手探りでどこにフナがいるか、うなぎがいるかも感じ取ることができたと、幼少の頃の思い出を懐かしく振り返る。

その当時の葛西は自然そのものが子どもたちにとってフィールドだった、と話す。
田植えの時期は親の手伝いをし、イナゴをとって佃煮にし、秋はハゼをたくさん釣った。当時は水門近くでハゼがたくさんとれたそうだ。小学生のころ、1時間で240匹も釣ったことがあると関口さんは笑う。
自然の中で五感を鍛え、直感を養い、また、家族や近所の人たちと助け合って生きることなど、大切なことはすべて地域コミュニティのなかで学んできたと関口さんは語る。

Profile

NPO法人ふるさと東京を考える実行委員会
理事長 関口 雄三さん

建築家。1948年江戸川区葛西生まれ。日本大学芸術学部卒業。1975年関口雄三建築設計事務所を開設。地元葛西を中心に、住宅·集合住宅·宿泊施設·公共施設など数多くを手掛ける。
ふるさとの自然や「子どもたちが海で泳ぐことができない」ことに問題意識をもち、2010年「NPO法人ふるさと東京を考える実行委員会」を設立。東京湾の再生活動に精力的に取り組んでいる。

次世代の子どもたちにツケを回さない

高度成長期になり工場が次々と建ち、川の汚染が海へと広がった。漁師がいなくなり、海を守る人はいなくなった。川や海がさらに汚染され、ふるさとの里海はついに遊泳禁止になった。

変わり果てていく葛西を目の当たりにし、関口さんは「子どもたちにとって、自然はすべての先生。自然が失われた今、子どもたちは季節感を感じることができているのだろうか?ここで育った子どもたちが『ふるさと』と思える環境づくりを再構築することが、大人にとっての責務なのではないか?」と痛切に感じたと語る。

「次世代の子どもたちにツケを回さない。」その使命を原動力に、先ずは海を取り戻す活動の一歩を踏み出す。東京都に働き掛け、多くの地元住民が関口さんに共鳴し、活動がはじまったのだ。

海開きの 式典にて斉藤区長と 並ぶ関口さん。

長い道のりだった。1989年には葛西臨海公園が開園したが、遊泳禁止のままだった。関口さんは署名活動を行ったり、ふるさとをキーワードにフォーラムを開催したりすると同時に、都の港湾局や公園協会に協力を促し水質浄化実験を重ねた。また、企業等に協賛金を募り、「竹ひび1人1本活動」に取り組み、自然の力で海を浄化する活動を続けた。

投網体験 を楽しむ子どもたち。

そして長年の努力が実を結び、子どもたちが葛西の海で泳げるようになったのだ。これからも多くの子どもたちに葛西の「里海」で楽しんでほしい、と関口さん。
そして、ふるさと葛西の自然環境を大切にする意志を、何十年、何百年先まで繋いでいってほしいと語る。

竹ひび1人1本活動(里海里山連携プロジェクト)

里山から伐採した竹を海に設置したものを「竹ひび」という。
魚やカキが住みつき、生物生態系の向上と水質浄化、さらに波消し効果により安全に海水浴ができることを目的としている。使用済みの竹ひびは焼かれ、その灰は肥料として里山に戻される。

この活動に協力したい方は以下へ
特定非営利活動法人ふるさと東京を考える実行委員会
TEL:03-3869-1992
H P :http://www.furusato-tokyo.org/

ふるさとのまちに自然とアートを取り戻す

建築家の関口さんは、今、美を追求する文化が失われつつあることを懸念している。
便利さが優先され、自然が忘れられているというのだ。本来の日本人は、「大和」という
言葉が象徴するように自然と調和して生きてきた。花鳥風月を楽しみ、慈しむ心を自然
から学ぶ美しい文化が生活の中にあったのだと話す。

関口さんは大学時代、芸術学部の教授の思想に大きな影響を受けた。ものをつくる素材は、
視覚だけでなく五感で感じるものを取り入れる。というのだ。
生活美を取り戻し建築にアートを取り入れること、自然環境と芸術文化を再生すること
が建築家の関口さんにとって最大のテーマとなり、数々の魅力ある設計を手掛け続けて
いる。

関口さんが、地元の人たちのために、心安らぐひと時を過ごしてほしいという思いで作っ
た建築が関口美術館である。住宅街にたたずむ自然と調和したおしゃれな美術館。地域
の人たちがいつでも気軽に立ち寄り、コーヒーを飲みながら寛ぎ、語らいあえる居間の
ような存在でありたいと思いを話す。

関口美術館本館内部。彫刻家の柳原義達氏の作品が中心に飾られている。
東館の外観。レセプション、展示会など貸ギャラリーになってい る。
本館入り口。

また、関口さんは、江戸川区と共に「デジタル美術館」をつくっている。
親水公園や緑道に点在している彫刻、関口さんが設計した商業施設、公共施設、マンショ
ンなどに設置した芸術作品と関口美術館とをつなげて、デジタル上でリアルな散歩を楽
しめる仕組みだ。
これからも自然、文化、アートをテーマに、命のぬくもりが感じられるふるさとを作り
続けたい、と話してくれた。

子どもたちがこのまちを愛し、いずれこのまちを守ろうという同志になってくれたら、
これ以上の喜びはないと関口さんは熱く語る。

ふるさと東京を考える実行委員会/関口美術館

特定非営利活動法人 
ふるさと東京を考える実行委員会

2001年任意団体として発足。2006年NPO法人を取得し、海水浴再生に向けて活動。2012年地元葛西海浜公園において50年ぶりに海水浴を復活させた。「里海まつり」「竹ひび1人1本活動」をはじめ、浅草海苔の養殖、ビーチクリーンなどを行っている。

関口美術館(本館・東館)

建築家である関口雄三さんが、地元の人たちに身近にアートに触れ、安らぎの空間として使ってほしいという思いから2003年に江戸川区唯一の美術館として開館。東館は随時企画展覧会を開催。

東京都江戸川区中葛西6-7-12
 アルトジャルダン1階
03-3869-1992

ふるさと東京を考える実行委員会
関口美術館

取材MEMO

こよなく自然を愛し、次世代の子どもたちのために、ふるさと葛西の海で海水浴を復活させた関口さんに深く感謝の気持ちを持ちました。一人一人が自分たちのふるさとを大切にする心を育むことが重要だと痛感しました。
関口美術館を中心に、アートが広がる街並みを見る日が待ち遠しいです。

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