アスリートが公立小学校で出前授業。放課後も一緒に触れあえる
バスケットボールや野球、フットサルなどのアスリートが小学校を訪れ、体育の出前授業をしたり、アスリートと一緒に楽しめるスポーツ教室に取り組んでいたりする画期的な団体がある。それが、一般社団法人MUCHUだ。
代表の佐田元稜さんが「アスリートによる体育の出前授業」を始めたのは2010年。2018年には「公立小学校での放課後スポーツ教室」を開始した。アスリートと一緒にスポーツを楽しむことで子どもの可能性を伸ばし、社会性を育むことを目指している。
「アスリートが教えるスポーツ教室」といっても、堅苦しさはまったく無い。アスリートが子どもたちに混じって一緒にスポーツを楽しむ「サークル」みたいな雰囲気で、子供たちは和気あいあいとしている。
muchuの指導方法には一つの特徴がある。子どもたちが練習や試合でミスしても怒らないが、言葉づかいが悪かったり、人の迷惑になることをしたときはしっかり叱る。子どもは素直に受け入れている。なぜならアスリート指導者は子どもたちを楽しませ、本物のパフォーマンスを見せることができるからだ。「スポーツを通じて社会性や人としての振る舞いを身に付けて欲しい」と佐田元さんは話す。
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多くの種目を提供しているのもmuchuの特徴だ。
日本では「石の上にも三年」と言われているように、同じスポーツを継続して長く続けるのが良いとされる傾向がある。でも欧米は違う。多くの種目を経験することに価値を置いているという。
指導者の平井選手は「サッカーで軍隊のような練習をしてきた。大学時代に海外からの留学生に『1つのスポーツしかやってこなかったの?』と言わたとき、後悔はしていないがちょっと損した気分になった」と話す。
佐田元さんは、勝ち負けにこだわってはいない。楽しく練習をすることをポリシーにしている。「楽しいから上達する。」それが子どもたちの可能性を伸ばしているのだろう。
今までリレー選手でなかった子が、選手に選ばれたとことも多々あるとのことだ。muchuには様々なスポーツの指導者が80名以上いるのも魅力だ。
Profile
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一般社団法人『MUCHU』代表理事佐田元 稜さん
大阪出身。大学で心身障害児福祉センターのボランティアを経験、就職後は人材派遣、業務プロセスの改善コンサル・実務を経験し、独立。2社立上げた後、上場企業のグループ統括を経て現職。
「人の幸せのため」という想いでMUCHUを設立。
関わる人みんなが幸せになって欲しい
佐田元さんがMUCHUを設立した理由には、前職での経験が影響しているという。投資ファンドで働いていた時、子会社としてアスリートに特化したサプリメント会社を設立。
佐田元さんが社長、オリンピック選手の為末大さんが取締役に就任。その会社でCSR(企業の社会貢献事業)の一環として「スポーツ選手が引退した後のセカンドキャリア」を支援する活動をすることになった。しかし、CSRは儲からないという理由で活動は即中止。
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その活動に価値を見出していた佐田元さんは2020年1月にファンドを退職、独立を選択。
ファンドで働いていた時はリストラは日常茶飯事で、「笑っている人が少ない会社」だったという。独立するなら「人の役に立ち、人が笑顔になり、人の幸せのために動こう」と佐田元さんは決めたそうだ。
アスリートが自らの体験やスキルを役立てられる場を作りたい。スポーツをなかなか体験できない子どもや、1つのスポーツに打ち込むことはあっても他のスポーツをする機会が少ない子どもたちに、「選択の機会」を提供したい。しかしボランティアではなく、誰かが犠牲になることなく長続きする仕組みを作りたい。佐田元さんは事業構想大学院大学にも通い、MUCHUの元となるアイデアを構想したという。
放課後のスポーツ教室(muchu放課後)は、現在江戸川区8校の小学校で展開中
陸上、フットサル、野球、バスケットボール、フライングディスク、ダンスなど多くの種目が実施され、英語でスポーツを行う時間もある。2023年3月からオンラインプログラム、4月から中学生向けのプログラムもスタートする。
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佐田元さんにどのような未来を、どのような展開で描いていますか?と聞いてみた。
「2022年11月にスポーツ庁から地域において子供から高齢者まで多世代で多種目のスポーツを行う『総合型地域スポーツクラブ』に認定された。地域で主体となり、積極的にスポーツが出来る環境を創っていきたい。」と佐田元さんは話す。
そして「日本ではまだ認知度が低い、デフスポーツ(聴覚障がい)やスペシャルオリンピックス(知的発達障がい)を広げていきたい。また、廃校を利活用して、高齢者に子どもたちと遊びに来てもらいたい。スポーツを通して子どもから高齢者まで繋がれる居場所をつくりたい。おじいちゃん、おばあちゃんの知恵袋を子どもたちに伝えてもらいたいと思っている。」と語る。
「子どもたちも、ハンディキャップのある人たちも、高齢者も、スポーツを通して繋がることができたら。」と、理想的な共生社会の実現に向けて突き進む佐田元さんの表情は、笑顔と輝きに満ち溢れている。
一般社団法人muchu
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放課後のスポーツ教室「muchu 放課後」は、現在江戸川区の8校の小学校で展開中。
小学生は一回1,500 円の参加費と年会費2,500 円で、実施校であればどこの学校でも参加できる。学校によって種目は異なり週に2 回から3 回開催。
muchu コーチを一部ご紹介!
フットサル
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平井雄大 さん
大学時代からF リーグ選抜でプレー。東京都最優秀選手賞・ベスト5 に選出された。
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熊谷利紀 さん
高校時代、サッカーでインターハイと選手権出場。2020 年、全日本フットサル選手権優勝。
野球
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田久保賢植 さん
世界6カ国14チームでプレー。2015年チェコ共和国で日本人初のコーチ兼選手となった。
バスケットボール
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細谷南雲さん
中学で全国ベスト16、高校で全国ベスト16。 現在、映像クリエイターとして活動。
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間中郁 さん
知的障害・学習障害の判定を受け支援級へ進む。SO 日本代表キャプテン銀メダル獲得。
陸上
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山村太亮 さん
アメリカでスポーツトレーナーの資格取得、カレッジアスリートへの指導経験を活かし指導。MUCHU副理事。
ダンス
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ケビン さん
18歳からヒップホップダンスを始める。
現在、ダンスを取り入れたお笑い芸人として活動。
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HiNano さん
船堀小学校のクラブ活動がきっかけでダンスを始める。アメリカへダンス留学中。オンラインコーチ。
フライングディスク
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曾我部栞菜 さん
18歳からヒップホップダンスを始める。
現在、ダンスを取り入れたお笑い芸人として活動。
英語
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デビッド・フィッシャー さん
TEFL取得。英語が定着していない国での英語講師とスポーツコーチの経験を活かす。
体育館での取材の際、子どもたちが真剣にそして伸び伸びと活動している姿が印象に残った。子どもの個性はこのような環境で引き出されるのだろう。佐田元さんが目指す多世代が一緒に取り組む「総合型地域スポーツクラブ」を応援したい。