NPO法人 荒川クリーンエイド・フォーラム オフィスマネージャー 今村 和志さん

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荒川のごみ問題に1万3千人のネットワークで取り組む

NPO法人 荒川クリーンエイド・フォーラムは、増え続ける海洋ごみの解決のために、国土交通省からの受託事業として清掃活動のコーディネートを行っている団体だ。
オフィスマネージャーを務めている今村さんにお話を伺った。

「海洋ごみは、生態系に様々な影響を及ぼす可能性が高いと言われています。海洋ごみの5~ 8 割(個数比)は河川から流出しているといった報告もあります。啓発活動と河川清掃の両輪を回すことが、海洋ごみを減らすために必要です。」と今村さん。

荒川クリーンエイド・フォーラムは、1994 年に「ごみだらけの荒川を何とかしよう!」とのかけ声で始まった。参加者は、個人や市民団体、企業や学校など約100団体で、流域一丸となってごみ拾いを継続している。荒川の上流(埼玉県の秩父市)から、河口(葛西海浜公園)まで、年間1万3千人もの人たちがつながり、清掃活動が30年間続けられている。

清掃活動の際に使用する運搬車「あらくりくん号(UPS基金寄贈)」。
荒川クリーンエイド・フォーラムのマスコットカーで、トビハゼがモデルとなっている。

捨てる人を減らし、拾う人を増やす

荒川クリーンエイド・フォーラムは流域の主催者を中間支援組織としてサポートしている。最近は企業の社会貢献活動の運営をサポートすることが多い。

荒川クリーンエイド・フォーラムがサポートする清掃活動は、単にごみを拾うだけではない。清掃活動を契機に、ごみ問題について、また生物の生息や生育環境について問題意識を持ってもらうことも目的としている。参加団体は、ごみの種類や数を調査カードに記録し、ごみを減らすにはどうすれば良いかを考える。
このようなオリエンテーリング形式にした活動は参加者がごみ問題に対する意識と気付きを得られ、楽しみながら活動できるのが特徴だと今村さんは話す。

実際に清掃活動を行った際の集合写真。

今村さんに7年間オフィスマネージャーとしてこれらの活動を続けている理由を伺うと、「参加者の方々と対話をしたり、つながりができることがエネルギーになっている」と話してくれた。
何度も参加してくれる常連さんがいたり、「心の洗浄になった」という声を聞いたりすると、やりがいを強く感じるのだという。

荒川の河川図

企業として参加する場合は、担当者とのご縁が長く続くこともあり、「プラスチックごみの多さにショックを受け、社内にウォーターサーバーを置いてごみ削減に取り組むことにした」などの報告を聞くこともあるという。

PROFILE

NPO法人 荒川クリーンエイド・フォーラム
オフィスマネージャー
今村 和志さん

博士(工学)。専門は河川や海岸の生態工学。日本で唯一建設工学系でアカウミガメをテーマとした博士号の取得者。
2017年より(特非)荒川クリーンエイド・フォーラム理事/オフィスマネージャー。
河川/海洋ごみ問題を軸に企業を対象としたサステナビリティ活動を年間50件以上実施している。

環境コンサルティングの仕事とはまた違う魅力

今村さんの前職は環境系のコンサルティング業界だった。生物調査を主とし、環境意識を啓発するイベントも開催していたようだ。荒川クリーンエイド・フォーラムに転職した理由は「継続性」と「広がり」の2つだと今村さんは答えてくれた。

クリーンエイドでは、清掃ボランティアで参加する人たちとの会話や、清掃活動をする企業の担当者との「ご縁」。これが今村さんにとって大きな魅力のようだ。
また、どこまで活動を拡大できるかの「広がりの可能性」も現在の方がはるかに大きいとのことだ。「どんなことも、結局大切なのは『人』なんだ。」と語る。

子どもたちに「キレイな荒川」を見せたい!

今村さんに今後の展望を伺うと、「荒川クリーンエイド・フォーラムのような仕組みを全国に広げたいですね。そうは言っても行政・自治体の予算や人の集まりやすさなどが影響するので、まずは三大都市圏で広がる事を目指しています。現在は関西の淀川で同じようなことができないか取り組んでいるところです。」と話してくれた。

「今の子どもたちは『キレイな荒川』を見たことがなくて、ごみがたくさんある姿が当たり前になっているんです。『キレイな荒川』が当たり前になって欲しいですし、私たちが活動しなくても美しさが保たれるようになっていたら一番良いですね」と話す今村さん。

忙しい毎日に私ができる Fasion×SDG

aid toデザイナー
竹村沙弥佳さん

インタビュー中に「荒川の清掃活動で回収したマイクロプラスチック(大きさ5ミリ以下の非常に小さなプラスチック)を原料として作ったアクセサリー」を見せてもらった。
ブランド名を「aid to」というアクセサリーは荒川のごみから作られたとは思えない。

デザイナーの竹村沙弥佳さんに伺うと、「アクセサリーを通して、河川・海洋ごみの問題に関心をもってもらいたい。」という願いを込めて製作しているのだという。

aid toが誕生した背景にはコロナ禍がある。感染予防のために「密」を避けると、大勢で集まれなくなった。また、清掃活動の参加者は男性に偏っているため、主に女性にアピールできる手段としてaid toは生まれた。困難な状況にこそ生まれたアイデアだった。

清掃活動で集めた実際のマイクロプラスチック。
アクセサリーを製作している様子。
製作は全て手作業で行われる。
出来上がったアクセサリー。

嶋村文男さん 島村運輸倉庫(株)代表取締役社長
(清掃場所:船堀橋上流右岸)

2005年の24時間テレビでの「荒川クリーンエイド」に家族と参加し、ごみを分別しながら数えるごみ拾いを楽しみました。その後、この活動を多くの方に知ってほしいと考え、ロータリークラブや他企業に紹介しました。

自社では「安全・環境教育」の一環として、毎年1~2回実施しています。気持ちよい汗をかくことで社員間のコミュニケーションが増すきっかけにもなります。
普段からポイ捨てをしないことを意識し、未来の子どもたちにきれいな自然環境を残しましょう!

特定非営利活動法人 荒川クリーンエイド・フォーラム

1994年に建設省荒川下流工事事務所(当時)が主導となり、地元の団体を中心に始まった一斉ごみ拾い。1997年に任意団体荒川クリーンエイド・フォーラムを結成し活動を継続。1999年NPO法人取得後は、環境教育や生物多様性の保全など活動を発展させ、市民・自治体・企業・学校などの様々なセクター間のパートナーシップを構築している。

【お問合せ・ご相談】
企業・団体(主催活動のご相談)
個人・グループ(参加者募集)

東京都江戸川区東小松川3-35-13-204
NICハイム船堀(小松川市民ファーム内)

03-3654-7240

営業時間:平日9:30~17:30(土日祝日休み)

荒川クリーンエイド・フォーラムwebサイト

取材MEMO

社会貢献活動を、多くの参加者に長く続けてもらうためには、活動が楽しく、
エンターテイメントでなければならないと語る今村さんの軽やかな笑顔が印象的でした。
これこそが活動が広がっている一番の秘訣なのでしょう。

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